翻訳

AI翻訳の精度は?
翻訳の仕事がなくなるのか?AI翻訳と仕事を奪われる翻訳者

  • 最終更新日:

AI翻訳と仕事を奪われる翻訳者
  • この記事がカバーする悩み:

    1. AI翻訳や機械翻訳とは何なのか分からない

    2. AI翻訳などが翻訳者の仕事を奪うのか?

    3. そもそも、AI翻訳や機械翻訳は使えるの?

  • 記事のターゲット:

    AI翻訳や機械翻訳などの仕組みを知らない人

1. AI翻訳が人間の翻訳に勝てない理由

勝てない理由は意外なところに

AI翻訳が人間に勝てない理由は翻訳の本質とAI翻訳の仕組みにあります。翻訳は原文・訳文の理解があってはじめて成立します。しかし、コンピューターは人間の言葉を理解している訳ではありません。機械にとって、文章は意味が全くない“文字のサラダ”でしかないんです。

翻訳の本質

翻訳は二つの「理解」で出来ています。一つ目は翻訳者が原文を読んで理解する場面です。翻訳者が原文の意味や意図を理解できなければ翻訳が始まりません。二つ目の理解は、読み手が訳文を読んで理解する場面です。仮に翻訳者が原文を理解できたとしても、書いた訳文が意味不明だったり、酔っ払いが考えたような文章だったりしたら誰も理解できません。「いったい何のために翻訳したのか」という話になります。翻訳は意味の理解で始まって、意味の理解で終わると言えるのはそのためです。

しかし、AI翻訳や機械翻訳などを動かすコンピュータープログラムは人間の言語を理解できません。 私たち人間が使う英語や日本語などの言語(自然言語という)はルールがあるように見えますが、実は例外だらけです。論理的かと思ったら、曖昧でふわふわしている部分が多い。その例外と非論理的な構造がコンピューターにとって最大の壁です。この壁があるからこそコンピューターが人間の言語を理解できず、人間の言語を理解できないからこそ翻訳もできません。

それでは、機械はどのように“翻訳”しているだろうか?この仕組みを理解することがAI翻訳を知る重要なポイントです。

Point

翻訳は原文・訳文の意味を理解してはじめて成り立つものです。

2. AI翻訳・機械翻訳の正体

AI翻訳。洗練されたスーパーコンピューターが文章を読み取って、非の打ちどころがない最適な訳文を考える。SF映画的なイメージを持っている人が多いでしょう。心苦しいですが、今からその夢をぶち壊します。

AI翻訳や機械翻訳はあなたが使っているWordやペイントのように、一つのコンピュータープログラムに過ぎません。高スペックのパソコンを必要としない、至って普通のコンピュータープログラムです

プログラムに翻訳したい原稿を読み込ませると、プログラムが文章をフレーズごとに細かく切り分けていきます。そのワンフレーズを一個ずつ、プログラムに入っているデータベースと比較します。似ている原文があったら、データベースからその訳文を出します。原稿の原文とデータベースの原文の一致率(似ている割合)が一定以下になると、そのセンテンスを翻訳せずにそのまま放置します。

例えるなら、本屋と書店員と私(おっ、年齢バレた?)。私が本屋に行って、欲しい本のISBN(本のバーコード付近にある13桁の数字で、本を特定できる不思議なコード)が書かれたリストを店員に渡します。店員の表情が一旦曇りますが、そのリストを見ながら本屋中を歩き回ってISBNが一致する本を探します。見つかった本は持ってきてくれるし、見つからなかった本は「これらの本はここにないよ」と言われます。「でも、この本は探しているものに似た内容を扱っていますので、代わりに読んでみますか?」と薦めてくれます。

この例えでは、本屋はAI翻訳プログラムのデータベース、店員は翻訳プログラム、私が出したリストは原稿に当たります。

データベースの役割

ここでみんな気づいたと思います。「もっと大きい本屋だったら、全ての本が買えたのでは?」と。その通りです。本屋が大きければ大きいほど、見つかる本が増え、逆に小さければ小さいほど、欲しい本を手に入れる可能性が減ります。翻訳のデータベースも全く同じです。

ここでは分かりやすく“データベース”と呼んでいますが、翻訳業界では「翻訳メモリー」や「コーパス」(Corpus)という名で通っています。翻訳メモリーは簡単に言えば、Excelで作った対訳表のようなものです。A1セルに日本語の「おはようございます」があれば、右隣のB1セルに対訳である英語の「Good morning」が入っています。A2に「こんにちは」があれば、B2に「Hello」が入っているという感じです。そのような対訳表が下へ続いていくイメージです。この言語ペアの登録数が多ければ多いほど、“使えるメモリー”ということになります。

Point

AI翻訳・機械翻訳のデータベース(翻訳メモリー)は“例文集”のようなものです。

プログラムの役割

今度は本屋の店員にスポットライトを当てます。親切な店員は見つからなかった本に近い別の本を薦めてくれました。ありがたいです。この店員はベテランで、いろんな本を読んでいるからこそ提案できたでしょう。では、店員は本をあまり読まない人でしたら、類似する別の本を薦められたでしょうか?

この“薦める・薦めない”をAI翻訳プログラムの性能の違いと考えてもいいです。“AI”や“人工知能”の話が出ると、“深層学習”や“ディープラーニング”という単語も必ずと言っていいぐらいセットでくっ付いてきます。いずれも、“様々な情報やパターンをプログラムに学習させている”という意味です。上記の例では、店員がいろんな本を読んでいるということです。店員が本を読めば読むほど、特定の本がなかった時に別の本を薦めたりできます。AI翻訳も学習を重ねれば重ねるほど、データベースにない別の類似翻訳を提案できます。

Point

翻訳プログラムの役割は“例文集”の中身を探して、人間が喜びそうなものを出すことです。

DeepLも同じ

最近DeepLという機械翻訳サービスが話題になりました。数年前から存在するサービスですが、最近日本語も対応できるようになったことで日本でも認知度が上がってきました。

DeepLはGoogle翻訳より精度が高いと言われますが、確かにその通りです。私たちから見ても、Google翻訳よりDeepLの方が良い翻訳を出します。その秘密はDeepLが使用しているデータベースにあります。

高校では宿題、大学では論文用の文献を理解するために“翻訳”した経験ありませんか?その時、多くの人がお世話になったのはLingueeという訳文検索サイトです。

Lingueeは独自のクローラー技術を使って、インターネット上のバイリンガルファイル(例えば、企業が公開している日本語版と英語版のWebサイト)を集めてデータベースを作っています。しかし、最大の特長はEUの資料です。欧州連合で作成された各言語の資料もデータベースのソースとして使用しています。つまり、Lingueeは膨大だけではなく、自然かつ正確(EUの資料は機械翻訳ではなく、ちゃんとしたプロの翻訳者が翻訳しています)なデータベースを持っています。DeepLがGoogle翻訳よりいい翻訳を出せるのは、Lingueeの上質かつ膨大なデータベースを翻訳メモリーとして使っているためです。

3. コンピューターにできるほど翻訳は甘くない

言葉の性質を見落とした挑戦

ここまでの説明で分かったのは、AI翻訳はSF映画に出てくるような壮大なものではなく、今あなたがこのページを見るために使っているWebブラウザーと同じようなコンピュータープログラムです。そのコンピュータープログラムは人間の言語(自然言語)を理解できず、原文・訳文は意味のない文字のサラダでしかない。そして、AI翻訳の精度は翻訳メモリー(規模と質)によって決まると言えます。

確かにDeepLの事例を見ると、翻訳メモリーに入れる“例文”の数を増やしていけばAI翻訳の精度が上がります。では、私たちが今から100年ぐらいかけて人類最大の翻訳メモリーを作ったら、最強のAI翻訳を手に入れられるのか?

言葉は生き物、賞味期限もある

言葉は日々変化しています。自分の親世代が使っていた“若者言葉”を想像してみてください。今ではその多くが “死語”だったり、正反対の意味に変わっている言葉もあります。たった20~30年ぐらいでですよ!さらに20~30年足して祖父母世代を想像してください。カオスです。そして100年前の明治・大正時代の訳文をAI翻訳がドヤ顔で出してきたら役に立つと思いますか?契約、プレゼンや商談の相手を怒らせて、絶望的な形で終わらせることが目的なら役に立つかもしれません。

言葉は生き物です。生き物と同じように生まれて、成長して(変な癖が付いたり、捻くれたり…)、やがて死んでいきます。そのややこしい言葉を二つ以上も操りながら、文章の意味、前後の関係(文脈)、文章の意図を理解し、翻訳を依頼した人の意図を汲んで、さらにその意図を読み手が理解しやすい訳文に組み込めるのは今のところ人間にしかできない代物です。機械学習だけでカバーできるものではない。

Point

翻訳の精度を高めるためには莫大な例文の“アベック”が必要ですが、蓄積に気が遠くなりそうな時間が掛かるので“許してちょんまげ”。文章は相手に伝わらなければ意味がない。だから、ビジネスには相手に響く“ナウい”な翻訳が必要です。

4. では、AI翻訳は使えないのか?

いや、それは翻訳を必要としている人次第です。翻訳には必ず目的があり、その目的に合う最適な翻訳があります(いい意味でも、悪い意味でも)。

例えば、翻訳の目的は人を説得したり、正確な情報を伝えたり、キレイなイメージを伝えることであれば、翻訳者に依頼するべきです。もちろん、人間だったら誰でもいいという訳ではありません。しっかりあなたの目的と要望を聞き、その目的を実現できるだけの腕を持つ翻訳者でなければなりません。

逆に翻訳は自分のためで、多少の「うん?!」や問題があっても気にしない場合はAI翻訳・機械翻訳などの自動翻訳で処理しても害が少ないでしょう(被害者は自分だけに限定できるという意味で)。外国語のニュースが何を言っているのか知りたい場合や、海外旅行で看板の内容を読まなければならない時など、AI翻訳はものすごく役に立ちます

翻訳者として活躍している、またはこれから翻訳者になろうと考えているあなた、安心してください。AI翻訳は内容把握程度の下手な翻訳は出せますが、ビジネスの世界はそんなに甘くない。センテンスや文脈の完璧な理解だけではなく、依頼者の要望や読み手の心情を汲んだ高度な翻訳が必要です。重要なコンペを想像してください。競争相手が披露した誤訳だらけのスライドと、あなたがプロ翻訳者に頼んで作った誠意あるプレゼン資料。失敗できないクライアントはどっちに仕事を託すと思いますか?

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