ショックを受けた人のイメージ
  • 翻訳業界で横行する請負と負の連鎖

    依頼者・翻訳者の利益を阻害する業界の仕組みを暴く

    Frontier編集部

  • MAR 13 2019

信じたのに...

数年前、“横浜傾きマンション”が大々的に報道されました。基礎杭が支持層に到達していない施工不良やデータ改ざんなどが主な原因と言われています。しかし、多くの人が衝撃を受けたのは問題の構造でした。大手の住宅分譲会社が作ったマンションかと思ったら、子請けや孫請けの知らない会社までが関わっていることが分かった。実際にマンションを購入した住民からは「大手会社が責任をもってマンションを作っていると思ったから安心して購入したのに、裏切られた」と怒りの声が上がりました。

翻訳業界も同じ

翻訳業界でも同じことが起きています。依頼者が翻訳業者に発注すると、翻訳業者は自社のリストまたは翻訳者が集まる第三者の掲示板から翻訳者を探します。自分たちで見つけられなかった場合、また別の業者にその翻訳を依頼し、その翻訳業者もまた翻訳者を探します。対応できる翻訳者が見つかるまでその作業が繰り返され、酷い場合は間に5社以上が間に入ることもあります。翻訳を発注する依頼者と実際に翻訳する翻訳者の間に下請けが入れば入るほど、翻訳者が受け取る報酬(翻訳単価)が下がります報酬(翻訳単価)が下がれば下がるほど、翻訳の品質も低下します。

この“ピンハネ構造”が業界に蔓延しています。依頼者は品質の低い翻訳を、翻訳者は低い報酬を受け取る原因になっています。この構図で依頼者と翻訳者が損する中、“ブローカー”の一人勝ちが続きます。

なぜそうなるのか?

プロの大工が集まる工務店のように、翻訳会社は“言語と文章のプロでできている会社です”。しかし、翻訳という仕事に免許は必要ありません。明日から翻訳者になろうと思ったら、宣言してしまえば挨拶程度の外国語でもなれます。そこに目を付けたのは「手軽な商売ないかな?」と考えていた人たちです。翻訳会社は本来言語等のスキルが必要ですが、もっともらしい営業トークで依頼者から案件を取り他の翻訳会社に再委託また能力不足で仕事がない激安のフリーランスで処理してもらえば、受注金額の半分以上を利益として得ることができます。翻訳業者が乱立し、業界全体のレベルが低下したのはそのためです。

請負の連鎖がもたらす問題

結果が良ければそれでいいのか。時と場合によります。新製品の発売を控えているメーカーを例に検討しましょう。ユーザー待望の機能を搭載した新製品は最大の販売効果を得るため、世界で同時発売を行う予定です。主要市場をカバーするため、マニュアルを日本語から5ヶ国語の多言語展開する必要があります。メーカーは大手翻訳会社のA社にマニュアルの多言語化を託しました。

“負の連鎖”の始まり

A社は登録されているプロの翻訳者(フリーランス)で翻訳すると約束しましたが、登録されている翻訳者とスケジュールが合わず、翻訳者掲示板等で原稿の一部を配布しながら翻訳者を探しました(原稿を見せないと翻訳者が対応しないから)。結局翻訳者が見つからなかったので、付き合いのあるB社に依頼を丸ごと再委託しました。B社は仕事欲しさに引き受けたものの、探しても対応できる翻訳者が見つかりません。B社は海外の翻訳会社とつながりがありますので、翻訳者が見つけやすいヨーロッパのC社に再委託。C社は5ヶ国語の内、自社で対応できる3言語だけを引き受け、残りの2言語を下請けのD社に再委託しました。

依頼者・原稿の情報がだだ漏れ

翻訳が再委託されるたびに、二つの大きな問題が起きます。一つ目は、引き受けた翻訳会社が原稿の一部または全部を添付しながら翻訳者を探します。つまり、まだ未発売の製品の情報を不特定多数にばら撒いています。開発中でありながら製品情報の一部がリークしたというニュースを見かけます。マニュアルはパンフレットと違って、製品に関する“情報の宝庫”です。その情報が発売前に漏れたら、メーカーが大きな打撃を受けます

翻訳の品質が著しく低下

二つ目の問題は著しい品質の低下です。翻訳が再委託されるたびに、関わっている業者が一切翻訳しなくても、一定の利益を取ります。上記の例だと、A社が100%の料金で100%の品質を提供しますが、B社の取り分がその70%だったら、品質も70%に落ちます。C社はさらに40%になり、D社は20%を下回ります。実際に翻訳するのはD社に雇われた翻訳者なので、翻訳者の報酬は最初の料金の9%以下になります。翻訳者もバカではないので、料金相応の品質しか出しません。結局、粗悪な翻訳になってしまい、ここでも損するのは依頼者であるメーカーです。

依頼者はどうすべきか?

まずは相手を知ることから

まずは上記の仕組みを理解することが大事です。依頼しようとしているところは自分たちで翻訳する本物の翻訳会社なのか、それとも“翻訳会社の皮を被ったブローカー”かを見極めることが重要です。料金だけで比較せず、担当者としっかり話すことで、その会社の翻訳に対する姿勢や知識量を確認することができます。詳しくは翻訳会社の選び方をチェックしてください。

正しい判断が生む二つのメリット

斡旋業者を避け、本物の翻訳会社に原稿を依頼することで、依頼者は原稿の情報を守りながら高品質な翻訳を手に入れることができます。しかし、それだけではない。翻訳業界で真剣に取り組んでいる本物の翻訳会社は国内の翻訳者育成に力を入れています。翻訳業界のレベル=その国の対外に対する“営業力・情報収集能力”です。つまり、本物の翻訳会社に翻訳を依頼することで日本の翻訳の未来が育まれ、国際舞台における日本の“ビジネス力向上”に貢献できます。

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