MTPE(機械翻訳+ポストエディット)で失敗しないために:クライアントが知るべき問題点と上手な付き合い方
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- 翻訳クライアント向け
「翻訳費用を抑えたい」、「納期を短くしたい」。
そんな理由で、翻訳会社が必死に勧めるMTPE(Machine Translation, Post Edit、以下、“機械翻訳”)を受け入れる企業は増えています。でもその結果、「品質が低くブランドが傷ついた」、「結局やり直しでコストが増えた」という声も後を絶ちません。なぜその問題が起きるのか?そしてクライアント(発注者)は何をすべきか?
目次
結論:機械翻訳は仕組みを理解した上で使い分ける必要がある
MTPEの品質は翻訳者に支払われる報酬に比例します。翻訳会社が欲をかくと、クライアントが低品質な翻訳でブランドイメージに傷が付いたり、法的トラブルに見舞われたりする可能性があります。その特性を十分理解した上で、情報が漏れても構わない文書、または“客の目に触れない”社内向け資料などの翻訳に限定する必要があります。
機械翻訳の品質が低い4つの原因
機械翻訳の仕組み
機械翻訳+ポストエディットはその名の通り、原稿を機械翻訳で埋め尽くしてから、翻訳者に添削(ポストエディット)させる翻訳方法です。機械翻訳のレベルが高ければ参考にかもしれませんが、機械翻訳はみんなが知っているGoogle翻訳のようなものです。旅行先では助かるかもしれませんが、仕事レベルでは使えないものです。
機械翻訳の独特な報酬計算
翻訳は通常、翻訳者が文章をゼロから翻訳します。1,000文字の原稿なら、1,000文字を翻訳します。そして、それぞれの翻訳者に「文字単価」があり、文字単価が10円だったら、1,000文字×10円=10,000円がその翻訳者の報酬になります。
機械翻訳の場合、翻訳会社は翻訳者に対してこんな詭弁を始めます。「丸ごと翻訳するのは大変だから、単価の100%を払うのは正しいです。しかし、機械翻訳+ポストエディットでは機械が翻訳の大部分をやりますので、あなたは軽い添削だけをすればいい。簡単なので、報酬は単価の30%です。いやなら断ってもいい。」
つまり、機械翻訳では翻訳者の単価が一方的に10円→3円に下げられます。1,000文字の機械翻訳+ポストエディットでしたら、翻訳者の報酬は1,000文字×3円=3,000円になってしまいます。
プロの翻訳者は当然、機械翻訳案件に応じない
単価が半分に下げられたら利益どころか、コストも賄えないため、プロの翻訳者が機械翻訳案件を引き受けることはありません。高品質な翻訳の需要は変わらずあるため、機械翻訳に時間を潰すことはしません。機械翻訳案件に応じるのは経験が浅く、実力もまだ十分備わっていない翻訳者だけです。これだけで翻訳の品質が一段と下がります。
機械翻訳の「報酬-品質同水準」の原理
しかし、機械翻訳に応じる翻訳者もバカではありません。報酬に合わせて品質を落としています。つまり、支払われる料金が本来の30%ならば、品質も本来の30%に落とします。
機械翻訳のスキームでクライアントが陥る5つの落とし穴
単価が下がれば、品質も比例して下がる
機械翻訳のポストエディットを依頼された翻訳者の報酬が通常の30%しか出ない場合、翻訳者も30%の品質しか出しません。結果、翻訳の修正は最低限の誤字脱字に留まり、誤訳・不自然な文章がそのまま納品されます。
「機械翻訳なら納期が短縮する」は誤解
1年掛かる家の建設を半年で建てられるなら納期の短縮といえます。しかし、半年で引き渡されたのはテントなら、裁判沙汰になることは確実でしょう。人間の100%手作り翻訳と機械翻訳の完成度が別物である以上、比較して納期の短縮をうたうことは正気の沙汰ではない。
翻訳会社が“中抜き”構造になっていることも
実際には翻訳会社が予算の大部分を取って、翻訳者にきちんと報酬が届いていないケースもあります。受注した翻訳会社が別の翻訳会社に再委託するときは特にこれに当てはまります。この場合、翻訳者は単価の30%を下回る報酬で作業するため、クライアントが受け取る翻訳の品質はさらに下がります。
短期的のコストダウンが、長期的なブランドリスクになる
企業イメージに影響を及ぼす誤訳・不自然な表現は、信頼性や製品価値を損ないます。目先の安い翻訳で節約できたとしても、ブランドダメージによる顧客離れによって失われる売り上げの方がはるかに大きい。
見えない損失:情報、著作権と知的財産の漏洩
機械翻訳の精度を高めるため、“エサ”となる原稿と翻訳文で学習させる必要があります。つまり、あなたが依頼した原稿の内容(契約内容やマーケティング資料などの社外秘情報)と、数々のフィードバックを経て作り上げられた翻訳も機械翻訳に学習(蓄積)されてしまいます。
機械翻訳+ポストエディットを行う翻訳会社から事前の説明があって、契約にもその旨が記載されていれば問題ありません。しかし、いずれもない場合、翻訳会社の他のクライアントに、あなたの会社の情報、知的財産、著作権などが無断で使用されている可能性があります。
クライアントが取るべき2つの戦略
機械翻訳を目的に合わせて使い分ける
機械翻訳の品質が悪いですが、どこかで使えないのか?
機械翻訳の最大のデメリットは機械損失と売り上げの減少ですが、ブランドがダメージを受けるのは顧客向けに機械翻訳を使った場合です。つまり、機械翻訳を社内向け資料や顧客の目に触れない原稿の翻訳に使えば、致命的なブランドダメージを避けることができます。
翻訳の“投資対効果”(ROI)を見える化して判断する
安い翻訳によって失われるリード、取り逃がす契約、傷つくブランドの価値を可視化すれば、「質の高い翻訳」の方がむしろ得策であることが見えてきます。今日やった翻訳を資産としてしっかり翻訳メモリに残し、その資産を上手く運用することで、会社のブランド力、価値と戦力を雪だるま式のように高めてくれます。
掛け捨ての機械翻訳か、結果とリターン重視の運用型翻訳か
機械翻訳はお金から発生する“技術的な問題”によって、クライアントと翻訳者が大きなダメージを被る構造になります。実態を知らずに安い機械翻訳に飛びつくと、数十万の節約が数千万の売り上げ減少につながります。機械翻訳の特性をしっかり理解した上で、使ってもいい原稿と避けるべき原稿を考える必要があります。
Frontierは100%人間の翻訳であなたのブランドイメージをしっかり高め、専用の翻訳メモリで翻訳資産を蓄積・運用します。「翻訳は投資」だと分かっているからこそ、投資対効果の高い翻訳サービスを提供しています。掛け捨ての機械翻訳にさよなら。リターン重視の運用翻訳へようこそ。
よくある質問
機械翻訳+ポストエディットはどんな経緯で始まった?
翻訳会社の数が増えすぎてしまったせいで、仕事の獲得が難しくなりました。そんな中、一部の翻訳会社は仕事を取るため、「機械を使った画期的なシステムで翻訳料金が安くなる」という売り込みを始めた。
機械翻訳+ポストエディットで翻訳料金が安くなるのはなぜですか?
「一番大変な翻訳はほとんど機械がやったため、軽く整えるだけでいい」という詭弁で、翻訳者に支払う単価を本来の30%程度に下げたためです。翻訳会社の儲けが増えた分、クライアントに請求する費用を数%下げられるため、翻訳料金が下がります。
機械翻訳のポストエディットで翻訳者の作業負担は本当に減りますか?
いいえ、逆に増えます。
流し込まれた翻訳のほとんどに何らかの問題があり、意味が間違っているものがあれば、文法的に間違っている場合もあり、支離滅裂な文章もあります。ポストエディットを行う翻訳者は一つずつ詳しく見ながら“間違い探し”をし、その絶望的な状態から文章を立て直さなければならない。ゼロからやれば5分でキレイにできるものが15分以上掛かることもあるため、むしろ翻訳者に大きな負担を強いています。
納品された機械翻訳+ポストエディットの品質はどのようにチェックできますか?
日本語と英語の両方を理解できる人に原文・訳文を見てもらう必要があります。
組織内にそのような人材がいない、もしくはチームにチェックする時間がない場合、第三者にチェックしてもらうこともできます。セカンドオピニオンが必要な場合はFrontierにお問い合わせください。