翻訳者のイメージ
  • 翻訳者│なるには何が必要か

    翻訳という仕事に“変な憧れ”を抱くあなたに伝えたい、翻訳者になるために必要な“3大要素”

    Frontier編集部

  • FEB 26 2019

翻訳は何をする仕事か?

文章を一つの言語から別の言語に変換する仕事です。例えば、英語で書いてある文章を日本語にしたり、日本語の文章をスペイン語に変えたりすることです。

ここで注意してほしいのは“文章”という単語です。翻訳は文章を別の言語に変える仕事であって、人が話したことを別の言語に変えることではありません。人が話したことをその場で別の言語に変えるのは通訳という。似ているようで全く違うものです。無理やり例えると、翻訳はサッカーだったら、通訳はラグビーです(共通点はボールを使っている点ぐらい)。“自分の言語と外国語を使う”ことが唯一の共通点で、それぞれ仕事に必要な能力やスキルは大きく異なります。翻訳と通訳はものすごい確率で混同されますので、定義を正確に把握することが大事です。

実際に何を翻訳するのか?

翻訳の範囲はすごく広いです。文章であればなんでも翻訳の対象になると考えてもいいぐらいです。翻訳というと契約書や論文を連想する人が多いですが、特許、映画、商品のパッケージ、マニュアル、Webサイト、国連の書類、ラブレター等、ニーズは多岐に渡ります。

全てを書き出すときりがないので、主に私たちが得意とする契約書Webサイト(コーポレートサイト、ECサイト)マニュアル(製品の取り扱い説明書)パンフレットカタログレストランのメニュー等、ビジネスシーンで求められる翻訳を念頭に話をしていきます。論文など、他の分野の翻訳を目指す場合はその分野に詳しい人に聞いてみてください。より正確な情報が得られます。

翻訳者になるために必要な“資格”

“資格”という言葉は聞こえがいいかもしれませんが、プロの世界で資格はほとんど通用しません。なぜなら、資格=“いい仕事ができる”というものではない。そのため、“資格”という言葉ではなく、私たちは“要素”と呼びます。

翻訳という仕事の特殊性、技術の進歩やビジネスで実際に求められる価値・条件など、実務に照らし合わせて考えると、プロの翻訳者は主に3つの能力を備える必要があるという結論に至りました。その答えを“翻訳者に必要な3大要素”とし、翻訳者の採用・教育の基本指針としています。

1つ目の要素:「圧倒的な言語能力」

日本語を母国語とする日本人で外国語ができる人を前提として説明します。“圧倒的”な言語能力はどういうものかというと、海外のバーで飲みながら現地の人と下ネタで話しに花を咲かせるほどの知識と実力です。現地の人の世界観を読み取り下ネタの程度(“重さ”と言った方がいいのか)を正確に理解しながら、話の盛り上がりを維持できる的確な言葉を返す必要があります。

上でも説明しましたが、翻訳は文章を一つの言葉からもう一つの言葉へ変換する作業です。つまり、インプットとアウトプットです。内容をインプットする(原稿を読む)とき、その内容を過不足なく正確に理解する必要があります。アウトプットするときもまた、インプットした内容を過不足なく正確に表す必要があります。つまり、正しい翻訳を出すためには、原文を正確に理解し、同じ程度の訳文にする必要があります。原文と比べて情報が足りなかったり、逆に原文にない情報を盛り込んだりすると、誤訳として判定される可能性が高くなります。

文章には(特にビジネスでは)様々な意味や効果が含まれたり、“伏線”が仕込まれたりされます。その文章を正確に翻訳するためには原稿の狙いを読み取り、意味や効果を正確に理解しながら、的確な訳文に仕上げる必要があります。そのためには日常会話や留学レベル(教科書程度)を遥かに超える「圧倒的な言語能力」が必要です。

2つ目の要素:「分野の知識」

魚触ったことない“圧倒的な言語能力”の弁護士がいたとしよう。釣り道具のカタログ翻訳を依頼したら、正しく翻訳できると思いますか?釣りやったことないよ!魚を釣りあげる方法や道具の名前など全く知りません。外国語さえ分かれば翻訳できると思う人の多くはこの「分野の知識」という点を完全に見落としています

「分野の知識」と聞いて大学やNASAレベルを連想し、難しく考え始める人が多いですが、ほとんどの場合はそこまで求められません。例えば、卓球の雑誌を翻訳するとき、卓球の博士号を保有している翻訳者に頼む必要ありますか?(圧倒的な言語能力を持っている卓球の博士号保有者に会ってみたい!地球にそんな人物が存在するなら)。もちろん、卓球のことを“ピンポン”と呼んでいる素人は当然無理ですが、趣味でやっている卓球ファンであれば正確で面白い文章に仕上げます。

“専門知識”を入手する方法は様々です。大学で勉強できるものがあれば(医学や法律など)、仕事でしか覚えられないもの(伝統工芸や職人の世界など)もあります。さらに、大学や仕事のどちらでもなく、趣味と独学で獲得するしかない知識もあります(ハッキングなどの新しい分野)。

3つ目の要素:「ITリテラシー」

昔の翻訳(パソコンがなかった時代)は紙原稿や手書きで動いていましたが、今ではあり得ない話です。作業スピードを速めて、品質を上げるためにはパソコンは必要不可欠です。さらに、ファイルの多様化で、WordやExcelなどのOffice系だけでいいという時代が終わりました。Webサイトに使われるhtmlファイルやマニュアル、雑誌などの元となるFrameMakerやInDesignなどを処理する必要があります。文章を一旦Wordやテキストファイルに落とすと工程全体に遅れが生じて、コストも膨らむから直接処理することが求められます。

そのため、翻訳者はより高度なパソコンの使い方、ファイルの操作を覚える必要があります。「パソコンが突然動かなかった」、「作業していたファイルが先祖返りした」では仕事になりません。パソコンを自分で組み立て、ファイルをデバッグするぐらいの知識が望ましい。納品が迫っているときに問題が起きたら、“サポートセンター”などありません。頼れるのは自分だけです。約束した時間に納品できなかったら、翻訳者どころか、働く人として失格です。

ITリテラシーはパソコン、ファイルの操作だけではない。クライアントから原稿をもらっているということはクライアントの情報を扱っているということです。無防備なパソコン(適切なインターネット接続やウィルス対策が施されていない環境)で作業すると情報が漏れてしまいます。カフェなどで作業することはクライアントの情報をばら撒くことです(ソーシャルエンジニアリングの格好の標的)。

このように、翻訳の処理だけではなく、防衛策を身に付けなければならない点で翻訳者には高度なITリテラシーが求められます

いかがでした?翻訳というのは様々な専門知識を組み合わせて初めてできる仕事です。外国語だけではない、専門知識だけでもない。翻訳者になるためには計り知れない努力が求められます。長い道のりですが、自分が手掛けた文章が有名なプロジェクト、一般の目に留まる雑誌やパッケージになったときの感動がものすごく大きいです。さらに、その努力を称えて、クライアントの心がこもった “ありがとう!”はいい仕事の後のビールよりうまい!

この記事はFrontierの翻訳者だけではなく、翻訳業界で活躍する複数の仲間の声を基に作っています。みんなの願いはこれから翻訳者になろうとしているあなたに、このブログが一つの判断材料になることです。

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