英語マニュアル翻訳の“隠れコスト”に悩む依頼者をFrontierはどのように手伝ったのか お見積もりに出てこないお金と時間の無駄をなくす

翻訳が納品されたあとのチェックや修正、翻訳会社と延々に続くやり取りは依頼者にとってお金と時間の大きな無駄。
お見積もりに出てこないこの“隠れコスト”はなぜ生まれるのか?このケーススタディでは、依頼者の悩みとその解決方法を紹介します。
目次
まずはケースの概要から
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- ソース言語
- 英語
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- ターゲット言語
- 日本語
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- 規模
- 10万ワード
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- レイアウト調整
- 必要
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- 内容
- 情報セキュリティ
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- CATツール
- Trados、Xbench
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- 納期
- 3か月
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- ファイル形式
- Word
マニュアル翻訳とは
マニュアル翻訳とは、製品の取り扱い説明書を英語や日本語などに翻訳することです。たまに勘違いされますが、自動翻訳に対する“手動”(マニュアル)的な翻訳の意味ではありません。
日本の製品を海外に輸出するときは日本語から英語に翻訳したり、逆に海外の製品を日本で売ったりするときは英語から日本語に翻訳する必要があります。いずれの場合も、取扱説明書はその製品の使い方を説明するものなので、マニュアルは情報の正確さと文章の分かりやすさが重要です。
マニュアル翻訳特有の難しさ - 正確な用語を使う
小説や商品のパンフレットなどと違って、マニュアル翻訳には特有の難しさがあります。情報の正確性を高めるため、用語集に従って翻訳しなければならないという難しさです。
イメージしやすいように、ソフトウェアのマニュアルを想像してみてください。文書作成ソフトウェアで文章を打ち込んだのはいいけど、保存方法が分かりません。マニュアルを参照すると、“打ち込んだ文章の保存は画面左上の「ドキュメント」メニューから行います”という説明がありました。しかし、ソフトウェアの画面左上をいくら探しても、「ファイル」というメニューしかありません。
オフィス系ソフトウェアに慣れている私たちなら、マニュアルの指示が間違っていることが分かります。「ファイル」メニューから保存を行います。しかし、取扱説明書を参照した人は初めて操作しているため、何も分かりません。しばらくは説明通りの「ドキュメント」というメニューを探しますが、その内に諦めて、メーカーにクレームを入れたり、返金を求めたりするでしょう。
ここに出てきた「ファイル」はソフトウェアの画面に表示されるメニューの名前です。ソフトウェアの画面に出てくるメニュー名、ボタン名、ウィンドウ名、エラーメッセージなどはすべてUI(ユーアイ、ユーザーインターフェイス)と呼びます。
ソフトウェアの規模にもよりますが、UIの数が5万点あったりします。そのすべてをまとめるのは用語集というファイルです。
つまり、翻訳者は5万点のUIを意識し、正しい用語を使いながらマニュアルを正確に翻訳しなければなりません。
用語集はその企業が使う独自の単語を集めたファイルであり、マニュアル翻訳では用語集に従って用語を正確に使うことが重要。
マニュアル翻訳特有の難しさ – 特有のルールに従う
マニュアルは説明の分かりやすさも大事です。マニュアルの使命は製品の使い方を教えることなので、「分かりやすい説明」=「製品をより早く使いこなせる」ことです。では、どうすれば説明が分かりやすくなるのか?
ずばり、必要な情報が引っ掛かりなく、すーっと理解できるようにすることです。
人は些細なことで集中が切れます。例えば、マニュアル翻訳に「です・ます」(敬体)と「だ・である」(常体)を混ぜると、気づいたユーザーが一瞬「うん?」と考えます。その一瞬の「うん?」で集中が切れて、掴めそうになった知識がどこかへ飛んでしまい、その段落をもう一度読み直すことになります。
1か月、1ヶ月、1箇月・・・
どれも“いっかげつ”であり、どれも同じ期間を指します。しかし、表記方法を混ぜるだけで、「なんか別の意味があるのか?」と一瞬考えてしまいます。それだけでまた集中が切れます。“車”と“クルマ”も同じで、意識してしまったときに集中が切れます。
ユーザーに“違和感”や二度見をさせないためには、書き方を統一するためのルールが必要です。マニュアル翻訳でそのルールを決めるのはスタイルガイドです。
スタイルガイドは上記の表記だけではなく、次のようなルールも決められます:
- 数字は全角ではなく、半角。
- アルファベットも半角。
- 文章は敬体(です・ます調)
- 敬語を使わない。
いずれも正しい・間違いではなく、“好み”の問題です。しかし、ルール1つでユーザーの理解速度が遅れたり、その企業のイメージが変わったりします。スタイルガイドはそれだけ大事。翻訳のスタイルガイドを見たことがなく、興味がある方は是非マイクロソフトのスタイルガイドを一度見てください:
スタイルガイドは翻訳の表現などを決める“ルールブック”であり、マニュアル翻訳でそのルールに従うことが重要。
本題:依頼者を悩ませていた“隠れコスト”問題

依頼者は情報セキュリティ関連のソフトウェア開発を行っていて、定期的にソフトウェアの英語マニュアルを日本語へ翻訳する必要がありました。それまで複数の翻訳会社に依頼してきたものの、満足できる翻訳が返ってきませんでした。なぜなら、納品されたあとの間違い探しと修正に莫大な時間と費用が掛かっていました。
このように、マニュアル翻訳の隠れコスト問題は、翻訳の見積もりに乗っていない間違い探しと修正に掛かった時間と費用のことです。例えば、英語マニュアル翻訳のお見積もりに「費用100万円」と「作業期間30日」が記載されていたとします。100万円の費用で30日後に翻訳されたマニュアルが届くと普通考えますが、実際には違う。
納品されたマニュアル300ページの“間違い探し”と修正だけに約300時間が必要です。この作業を2人で行った場合、おおよそ4週間の時間が掛かります。社員一人の人件費が60万円だった場合、2人で120万円が掛かります。
結局、マニュアルを完成させるために掛かったのはお見積もりに記載されていた「費用100万円」と「作業期間30日」だけではなく、納品されたあとの間違い探しと修正に要した120万円と4週間を含めて考える必要があります。つまり、そのマニュアルの翻訳に掛かったのは倍の「費用220万円」と「作業期間60日」です。
マニュアル翻訳の隠れコストは翻訳納品後の修正に掛かる時間と費用を指す。
問題の原因とマニュアル翻訳の一般的なやり方
依頼者は翻訳会社にスタイルガイドと用語集を提供していたのに、なぜこの問題が起きたのか?
一般的な翻訳会社は翻訳者を従業員として雇わない。翻訳者はアウトソーシングされたフリーランス。翻訳会社は利益を最大化するため、一番安いフリーランスを探して、マニュアル翻訳を再委託します。
安いフリーランスは知識と経験が少なく、ツールを使いこなす技量もないため、何万もの用語と数百のルールは記憶を頼りながら翻訳します。しかも、そのすべてが正確に使われているかどうかは目で見てチェックします。
用語集とスタイルガイドの内容を頭に入れて、目だけでチェックしても、品質の高い翻訳が出ません。しかしこれが翻訳業界の現状です。
隠れコストは“目”と“記憶”だけを頼りにした原始的な翻訳方法によって発生する。
依頼者の悩みを解決するFrontierのマニュアル翻訳

Frontierの翻訳者は元々マニュアルを作る側だったため、マニュアル翻訳は得意な翻訳の一つ。依頼者の相談を受けて、それぞれの問題に対して次の対策を行った:
CATツールを通じて、マニュアル翻訳に用語集を連動
依頼者の用語集はExcelで作られたファイルだった。Excelのままでは参照・検索が煩雑で非効率的なため、Excelファイルからデータベースを作成。作られたデータベースを翻訳のメインツールであるTradosに連動し、翻訳しながら用語がリアルタイムで提案されるシステムを構築。
マニュアルの翻訳がスタイルガイドに合っているかどうかを自動的にチェック
プログラミングなどで使われる特殊な文字列の表現方法を使って、ルールのチェックリストを作成。翻訳時にチェックリストを実行することで、数百に渡るルールが瞬時に、漏れなくチェックされる。
人の記憶と注意力に限界があるからこそ、用語集とスタイルガイドのチェックをコンピューターに任せる。
他では得られないFrontierならではのメリット
私たちは依頼者の頭痛の種の取り払うだけではなく、独自の翻訳方法でさらに多くのメリットを提供する:
マニュアルの説明がさらに分かりやすくなった
翻訳者は用語やスタイルガイドを気にする必要がないため、分かりやすい翻訳作りに集中できる。
翻訳に掛かる納期が短くなった
用語集とスタイルガイドの項目が自動的にチェックされるため、一般的な翻訳会社が設けるチェック期間(“目で間違い探し“)を省略できる。
費用も安くなった
Frontierでは依頼者専用の翻訳メモリーが作成されるため、2回目の翻訳に1回目の翻訳からそのまま使える文章がある時に割引を適用する。翻訳の回数が重なればかさなるほど、費用が安くなっていく。
Before / Afterと結論
依頼者が当たり前だと思っていた納品後のチェックと修正。その“隠れコスト”問題はFrontierに相談する前と後でどのように変わったのか?
項目 | Before | After |
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費用 | 翻訳費用自体は安いが、チェックと修正に掛かる追加費用を考えると、見積もりの2倍以上に膨れ上がっていた。 | 費用はお見積もり通りの金額なので、稟議が通りやすく、コスト管理もしやすくなった。 |
時間 | チェックと修正に翻訳の2倍以上の期間が掛かることもあったため、プロジェクトの計画が立てづらかった。 | 納期もお見積もり通りの期間で翻訳はそのまま使えるので、公開日に合わせた計画が立てられるようになった。 |
品質 | 用語とスタイルガイドのミスが多く、内容を理解できてないような直訳っぽい文章だった。 | 翻訳ミスがなく、ユーザーにとって分かりやすく・的確な翻訳文にレベルアップした。 |
マニュアル翻訳は用語集やスタイルガイドなどの細かいルールに縛られているため、難易度の高い翻訳の一つです。しかし、翻訳業界では未だに原始的なやり方(テキストエディターで翻訳を打ち込んで、記憶を頼りに目でチェックするなど)が主流です。
それもそのはず、翻訳ツールは数十万円もする高価なもので、使いこなすためには高度な専門知識が求められます。
Frontierはコストを惜しむことなく、ハードウェア・ソフトウェア、そして翻訳者を育てるための投資を行っています。この努力が生み出す知識と技術が私たちの強みであり、合理的なマニュアル翻訳を提供できる根拠です。
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