翻訳メモリとは?自社専用翻訳メモリを運用するメリット
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同じフレーズを何度も訳していませんか?
マニュアルや契約書、製品情報など、企業の多言語対応には繰り返し登場する言い回しが数多くあります。もしそれを毎回ゼロから訳していたとしたら、コストも時間ももったいないね。
今回はそんなムダを省き、翻訳の品質と効率を飛躍的に高める「自社専用の翻訳メモリ」を持つ意味と価値について解説します。
目次
翻訳メモリとは?
翻訳メモリはCATツールのメイン機能で、翻訳した文章のペアが登録されるデータベースのようなものです。翻訳メモリがあれば、過去の翻訳を簡単に検索できたり、類似文があったときに過去のデータを提示してくれたりするなど、翻訳者の作業負担を軽減し、作業効率が劇的に向上します。
翻訳メモリの運用とは?
翻訳メモリは翻訳者の負担軽減と作業効率化のために作られた仕組みですが、クライアントもメモリをしっかり運用することで、そのメリットを享受できます。
例えば、翻訳メモリを2回目以降の翻訳にも使い続ければ、納品が早まったり、翻訳の品質がさらに上がったり、コストを抑えることができます。翻訳メモリの運用は、翻訳メモリという“資産”を“育てながら”それらのメリットを“収穫”することを指します。
翻訳メモリを運用するメリット

CATツールは翻訳しやすい形に原稿を作ってくれるだけではなく、高度な機能で翻訳とチェック作業の効率も高めてくれます。ここではそれぞれの機能を具体的に説明しながら、その機能があるだけでどれぐらい助かるのかも解説します。
翻訳の品質向上
翻訳メモリを正しく運用することで、コーポレートサイト、ECサイト、カタログやマニュアルなど、異なる原稿でも同じ用語や表現などが使われるため、全体の翻訳を統一できます。企業アイデンティティをしっかり守りながら、マーケティング効果の高い販促ツールでビジネスを優位に展開できます。
翻訳の納期短縮
翻訳メモリは平たく言えば、英語と日本語のフレーズのデータベースです。そのデータベースから過去の翻訳を活用できれば、作業期間を短縮できます。
翻訳コストの抑制
翻訳メモリのデータを問題なく流用できた場合、本来そこに発生するコストを抑えることができます。Frontierでは、次の条件に一致した部分は費用が発生せず、0円になります:
- 文脈も一致したセンテンス
- チェック不要な案件
- フィードバック修正が含まれていない翻訳プラン
翻訳メモリの運用でメリットを得るための条件
翻訳メモリをしっかり運用して上記のメリットを得るためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
CATツールを使用する
翻訳メモリはCATツールの一機能であるため、CATツールが使える案件でなければならない。原稿の上書きが指定された翻訳やCATツールが使えない案件などは翻訳メモリのメリットが得られません。
関連性のある原稿であること
翻訳メモリの力が最大限発揮されるのは関連性のある原稿です。例えば、同じシリーズの製品マニュアル、同じ会社の販促ツールなどです。最初の翻訳は農業に関するもので、2回目の翻訳は金融に関するものであれば、使いまわせる部分はほとんどありません。
完璧な翻訳メモリであること
翻訳メモリに誤訳が登録された場合を想像してみてください。そのメモリを使ったら、2回目の翻訳のいたるところにその誤訳が流用される可能性があります。誤訳だけではなく、訳文の不統一、用語集またはスタイルガイドに反する翻訳、数値が間違っている翻訳など、不備のある翻訳がメモリに登録されると、納期の大幅な遅れや予想外の費用が発生することも。
翻訳メモリは完璧なものでなければならないため、Frontierは他社が作成した翻訳メモリの使用を受け付けていません。他社作成の翻訳メモリにメンテナンス・知識不足による間違いや不備が多いため、運用に適していません。
翻訳メモリ運用の問題点
翻訳メモリを使うのは翻訳者とクライアントだけではありません。翻訳会社もそのメリットを受けています。問題はそのやり方にあります。
翻訳メモリは英語と日本語のデータベースであり、そのデータベースが大きければ大きいほど、より多くの原稿に流用できます。流用すればするほどコストを抑制できます。この点に気付いた一部の翻訳会社はとにかく大きな翻訳メモリを作ろうとします。すべてのクライアントの依頼を一つの翻訳メモリに集約すれば、流用できる可能性が高いからです。流用できる量が増えれば、翻訳者に払う報酬が減り、翻訳会社の利益が上がりますから。
この間違ったやり方の問題点とクライアントのデメリットを整理します。
他社の翻訳が混ざっている翻訳メモリ
翻訳メモリを使う大きなメリットは自社の表現や用語を統一できる点です。
しかし、複数社の翻訳を1つの翻訳メモリに集約することで、全ての翻訳が混ざってしまいます。そうすると他社の翻訳が自分の原稿にも入ってしまい、表現や用語がバラバラになってしまいます。つまり、文章の統一というメリットがそこで打ち消されます。
情報が流出することがある
複数社の翻訳を1つの翻訳メモリに入れると、他社の翻訳が自分の原稿に入ってしまう可能性がありますが、逆もしかりです。あなたの翻訳が他社の原稿に入る可能性も出てきます。
当たり障りもない文章であれば問題ないですが、独の製品や技術に関する部分だったら、自社の情報が流出する結果になってしまいます。
問題を避けるため、依頼者が発注前に確認すべきこと
翻訳メモリの運用方法はそれぞれの翻訳会社で異なるため、その内容を知ることが重要です。ここでは、翻訳を依頼する前にチェックすべき点を説明します。
翻訳会社が機械翻訳を使っているかどうか
機械翻訳サービスを提供している翻訳会社にとって、機械翻訳の心臓部である翻訳メモリが何より重要です。処理能力を上げるため、常にデータ量を増やす方法を模索しています。
クライアントが依頼した翻訳のデータを機械翻訳にフィードすることを事前に説明して、クライアントの承諾を得れば問題ありませんが、何も言わずに翻訳データを収集している業者も存在します。知らずに自社のデータが使われる可能性がありますので、依頼する前に確認することが重要です。
翻訳会社が翻訳メモリを使いまわしているか
機械翻訳サービスを提供している翻訳会社にとって、機械翻訳の心臓部である翻訳メモリが何より重要です。処理能力を上げるため、常にデータ量を増やす方法を模索しています。
クライアントが依頼した翻訳のデータを機械翻訳にフィードすることを事前に説明して、クライアントの承諾を得れば問題ありませんが、何も言わずに翻訳データを収集している業者も存在します。知らずに自社のデータが使われる可能性がありますので、依頼する前に確認することが重要です。
いざというとき、翻訳メモリは買い取り可能か
翻訳には著作権があり、翻訳メモリの権利は翻訳者にあります。
そこで問題になるのは、翻訳会社を変更したいときです。今まで蓄積してきた翻訳メモリを別の翻訳会社で使う場合、その翻訳メモリは渡されるのか?
ほとんどの場合は買い取ることで別の翻訳会社でも使えますが、翻訳会社とフリーランス翻訳者の間で権利関係が曖昧な場合、大きな頭痛に発展することがあります。せっかく蓄積した翻訳資産を失わないためにも、翻訳メモリの運用を始める前に翻訳会社に確認することをお勧めします。
自分だけの翻訳メモリで翻訳資産を育てよう
翻訳者が翻訳メモリを使うことで、翻訳の品質が上がったり、作業スピードも速くなったりします。その恩恵はクライアントにとって、高品質、納期短縮、コスト削減などの形で現れます。翻訳メモリを使い続けることでその恩恵がさらに高まります。
メモリの運用にはいくつかの注意点がありますが、知識と技術がある翻訳会社なら、メモリを正しく運用できる可能性が高いです。Frontierは厳格な基準で、翻訳メモリを企業ごとだけではなく、案件ごとに分けて管理しています。
製品マニュアル、Webサイト、会社案内などの継続性の高い翻訳をお持ちの場合は一度Frontierにご相談ください。業界随一の技術力で最適な翻訳ソリューションをご用意します。